『生きて死ぬ私』以来の、人生エッセイの系譜です。
ありったけの春
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あの知性派の小林さんが、大声を張り上げなくてはならないところなど、想像しにくいけれども、そんな時代もあったのだろう。細いからだで、声を張り上げて、懸命に届かせようとする。拡声器などない。誰にも頼ることなどできない。
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周囲の人が後ろを向いている。二階の貴賓席に、皇太子さまがいらした。あの時と同じ、東京文化会館の中で。人々が立ち上がって拍手する。私も拍手する。皇太子さまが、立ち上がって、軽く会釈される。劇場の明かりが落ち始めた。
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